マルチプロジェクト・ビルド 

このページでは、一つのプロジェクトで複数のプロジェクトを管理する方法を紹介する。 このガイドのこれまでのページを読んでおいてほしい。 特に build.sbt を理解していることが必要になる。

複数のプロジェクト 

一つのビルドに複数の関連するプロジェクトを入れておくと、 プロジェクト間に依存性がある場合や同時に変更されることが多い場合に便利だ。

ビルド内の個々のサブプロジェクトは、それぞれ独自のソースディレクトリを持ち、 package を実行すると独自の jar ファイルを生成するなど、概ね通常のプロジェクトと同様に動作する。

個々のプロジェクトは lazy val を用いて Project 型の値を宣言することで定義される。例として、以下のようなものがプロジェクトだ:

lazy val util = project

lazy val core = project

val で定義された名前はプロジェクトの ID 及びベースディレクトリの名前になる。 ID はコマンドラインからプロジェクトを指定する時に用いられる。 ベースディレクトリは in メソッドを使ってこのデフォルトから変更することができる。 上記の例と同じ結果になる記述を明示的に書くと、以下のようになる。

lazy val util = project.in(file("util"))

lazy val core = project in file("core")

共通のセッティング 

複数プロジェクトに共通なセッティングをくくり出す場合、 commonSettings という名前のセッティングの Seq を作って、 それを引数として各プロジェクトの settings メソッドを呼び出せばよい。 (可変長引数を受け取るメソッドに Seq を渡すには _* が必要なので注意)

lazy val commonSettings = Seq(
  organization := "com.example",
  version := "0.1.0",
  scalaVersion := "2.11.7"
)

lazy val core = (project in file("core")).
  settings(commonSettings: _*).
  settings(
    // other settings
  )

lazy val util = (project in file("util")).
  settings(commonSettings: _*).
  settings(
    // other settings
  )

これで version を一箇所で変更すれば、再読み込み後に全サブプロジェクトに反映されるようになる。

依存関係 

一つのビルドの中の個々のプロジェクトはお互いに完全に独立した状態であってもよいが、 普通、何らかの形で依存関係を持っているだろう。 ここでは集約(aggregate)とクラスパス(classpath)という二種類の依存関係がある。

集約 

集約とは、集約する側のプロジェクトであるタスクを実行するとき、集約される側の複数のプロジェクトでも同じタスクを実行するという関係を意味する。例えば、

lazy val root = (project in file(".")).
  aggregate(util, core)

lazy val util = project

lazy val core = project

上の例では、root プロジェクトが utilcore を集約している。 この状態で sbt を起動してコンパイルしてみよう。 3 つのプロジェクトが全てコンパイルされることが分かると思う。

集約プロジェクト内で(この場合は root プロジェクトで)、 タスクごとに集約をコントロールすることができる。 例えば、update タスクの集約を以下のようにして回避できる:

lazy val root = (project in file(".")).
  aggregate(util, core).
  settings(
    aggregate in update := false
  )

[...]

aggregate in update は、update タスクにスコープ付けされた aggregate キーだ (スコープ参照)。

注意: 集約は、集約されるタスクを順不同に並列実行する。

クラスパス依存性 

あるプロジェクトが、他のプロジェクトにあるコードに依存させたい場合、 dependsOn メソッドを呼び出して実現すればよい。

例えば、coreutil のクラスパスが必要な場合は core の定義を次のように書く:

lazy val core = project.dependsOn(util)

これで core 内のコードから util の class を利用することができるようになった。

また、これにより core がコンパイルされる前に utilupdatecompile が実行されている必要があるので プロジェクト間でコンパイル実行が順序付けられることになる。

複数のプロジェクトに依存するには、dependsOn(bar, baz) というふうに、 dependsOn に複数の引数を渡せばよい。

コンフィギュレーションごとのクラスパス依存性 

foo dependsOn(bar) は、fooCompile コンフィギュレーションが barCompile コンフィギュレーションに依存することを意味する。 これを明示的に書くと、dependsOn(bar % "compile->compile") となる。

この "compile->compile" 内の -> は、「依存する」という意味で、 "test->compile" は、fooTest コンフィギュレーションが barCompile コンフィギュレーションに依存することを意味する。

->config の部分を省くと、->compile だと解釈されるため、 dependsOn(bar % "test") は、fooTest コンフィギュレーションが barCompile コンフィギュレーションに依存することを意味する。

特に、TestTest に依存することを意味する "test->test" は役に立つ宣言だ。 これにより、例えば、bar/src/test/scala にテストのためのユーティリティコードを 置いておき、それを foo/src/test/scala 内のコードから利用することができる。

複数のコンフィギュレーション依存性を宣言する場合は、セミコロンで区切る。 例えば、dependsOn(bar % "test->test;compile->compile") と書ける。

デフォルトルートプロジェクト 

もしプロジェクトがルートディレクトリに定義されてなかったら、 sbt はビルド時に他のプロジェクトを集約するデフォルトプロジェクトを勝手に生成する。

プロジェクト hello-foo は、base = file("foo") と共に定義されているため、 サブディレクトリ foo に置かれる。 そのソースは、foo/Foo.scala のように foo の直下に置かれるか、 foo/src/main/scala 内に置かれる。 ビルド定義ファイルを除いては、通常の sbt ディレクトリ構造foo 以下に適用される。

foo 内の全ての .sbt ファイル、例えば foo/build.sbt は、 hello-foo プロジェクトにスコープ付けされた上で、ビルド全体のビルド定義に取り込まれる。

ルートプロジェクトが hello にあるとき、hello/build.sbthello/foo/build.sbthello/bar/build.sbt においてそれぞれ別々のバージョンを定義してみよう(例: version := "0.6")。 次に、インタラクティブプロンプトで show version と打ち込んでみる。 以下のように表示されるはずだ(定義したバージョンによるが):

> show version
[info] hello-foo/*:version
[info] 	0.7
[info] hello-bar/*:version
[info] 	0.9
[info] hello/*:version
[info] 	0.5

hello-foo/*:version は、hello/foo/build.sbt 内で定義され、 hello-bar/*:version は、hello/bar/build.sbt 内で定義され、 hello/*:version は、hello/build.sbt 内で定義される。 スコープ付けされたキーの構文を復習しておこう。 それぞれの version キーは、build.sbt の場所により、 特定のプロジェクトにスコープ付けされている。 だが、三つの build.sbt とも同じビルド定義の一部だ。

.scala ファイルは、上に示したように、単にプロジェクトとそのベースディレクトリを列挙するだけの簡単なものにして、 それぞれのプロジェクトのセッティングは、そのプロジェクトのベースディレクトリ直下の .sbt ファイル内で宣言することができる全てのセッティングを .scala ファイル内で宣言することは義務付けられいるわけではない。

ビルド定義の全てを単一の project ディレクトリ内の場所にまとめるために、 .scala ファイル内にセッティングも含めてしまうほうが洗練されていると思うかもしれない。 ただし、これは好みの問題だから、好きにやっていい。

サブプロジェクトは、project サブディレクトリや、project/*.scala ファイルを持つことができない。 foo/project/Build.scala は無視される。

プロジェクトの切り替え 

sbt インタラクティブプロンプトから、projects と入力することでプロジェクトの全リストが表示され、 project <プロジェクト名> で、カレントプロジェクトを選択できる。 compile のようなタスクを実行すると、それはカレントプロジェクトに対して実行される。 これにより、ルートプロジェクトをコンパイルせずに、サブプロジェクトのみをコンパイルすることができる。

また subProjectID/compile のように、プロジェクト ID を明示的に指定することで、そのプロジェクトのタスクを実行することもできる。

共通のコード 

.sbt ファイルで定義された値は、他の .sbt ファイルからは見えない。 .sbt ファイル間でコードを共有するためには、 ベースディレクトリにある project/ 配下に Scala ファイルを用意すればよい。

詳細はビルドの整理を参照。